第4回ケアマネージャー様向けオンラインセミナーQ&A

第4回ケアマネージャー様向けオンラインセミナー「パーキンソン病に対する訪問看護、リハビリの役割」でいただいたご質問にお答えいたします!ご質問を寄せてくださったケアマネージャー様に改めて御礼申し上げます。

ご参考になれば幸いです。

いくつか対処法があるため、以下3つのポイントに分けてお答えいたします。

①身体の使い方

  • パーキンソン病のご利用者様は筋肉のこわばりによって身体が縮こまり、前傾姿勢が強まる傾向にあります。結果として、前のめりな歩き方になりやすいです。立ち上がった直後に背筋を伸ばすことを意識することで、突進歩行が軽減される場合があります。タンスなどの背の高い家具を支えにすることで、より背筋を伸ばしやすくなります。
  • パーキンソン病は、前傾姿勢によって上半身が沈み、足が上がりにくくなることで、歩幅が狭くなる現象が起こりやすいです。細かい歩幅ではブレーキが効きにくく、突進歩行が助長されやすくなります。背筋を伸ばし、太ももを上げるように意識することで、歩幅は広がりやすくなります。

 

②環境整備

  • パーキンソン病は、狭い通路や暗い場所などで視覚的な情報が不足すると、身体のこわばりや姿勢の障害が強まり、突進歩行などの歩行障害がみられやすくなります。自宅内でよく使用する通路は、物の整理を行い、人間1人が余裕を持って通れるスペース(横幅約80〜90cm)を確保することをお勧めします。夕方や夜間に突進歩行が強まる場合は、廊下の電気を点けたままにする、人感センサー付きライトを設置するなどして、暗い場所を少なくする工夫が効果的です。
  • 講習会の資料に添付した画像のように、床に歩幅1歩ごとにテープを貼り付け目印にすることで、突進歩行が軽減できる場合があります。

 

③福祉用具

  • 上記2つの方法でも対処が難しい場合は、置き型の手すりや突っ張り棒を設置して、伝う箇所を増やすことで対応していきます。手すりという視覚的な情報が、結果として突進歩行を軽減できる場合があります。
  • 手すりの設置が難しい場合は、屋内用のシルバーカーを提案することがあります。手指の変形や握力に問題がなければ、ブレーキ付きの物をお勧めします。車輪が付いていると歩行が制御できず不安ということであれば、車輪が付いていない歩行器(ピックアップ歩行器)を提案することが多いです。

感情を他者に伝えにくくしている要因によって、対応が異なります。以下、3つの要因に分けて、対応を解説いたします。

1.抑うつ

【1-1 ストレスの特定と緩和】

パーキンソン病患者は、症状の進行に伴う身体的、精神的ストレスによりうつ症状を認める場合があります。疲労や不安を感じやすい、無気力・無感動といった症状から、日常生活での活動が少なくなっていきます。

対処としては、まずストレスの要因を特定し、取り除くことが重要です。ただしパーキンソン病の場合、「パーキンソン病を患っていること」自体にストレスを感じている場合が多いです。パーキンソン病は生涯付き合っていく病気であるため、本人に病気についての理解を促し、将来的に自分の身体や生活がどうなっていくのかをイメージしてもらうことが、不安を取り除く上で重要になります。

本人や主介護者から医師に現状を伝え、予後についてのアドバイスを求めることが有効な手段の1つとなります。パーキンソン病患者とのコミュニケーションツールとして、パーキンソン病コミュニケーションシートがあります(出典:パーキンソン病・筋萎縮性側索硬化症・ふなばし神経難病サポートネットワーク)

【1-2 コミュニケーション方法】

既にうつ症状が出現している方には、更なるストレスを与えないよう、コミュニケーションの方法に気をつけなければなりません。以下にいくつか具体的な方法を記載します。

①会話は落ち着いた空間で行う。

テレビやラジオを消す、複数人で話す場合はできるだけ少人数(3〜4人)で行うなど。本人が言葉に詰まった時に会話の内容を手助け、翻訳してくれる介助者がそばにいると、安心して会話ができます。

②考えを整理する時間を作る。

パーキンソン病の症状のひとつとして、考えるスピードが遅くなることが挙げられます。言葉が出るのが遅いからといって「早く喋って!」「何を言っているのか分からない」などと急かすと、本人に多大なストレスがかかります。本人が喋り出す前に、一度深呼吸を促して、気持ちを落ち着かせることも効果的です。

③簡潔な内容で伝える。

複雑な表現では、本人が理解するまでに時間がかかるため、出来るだけ短く簡潔な内容で伝えることが重要です。ただ子供に話すような表現では、本人を不快にさせてしまうため、言葉を短く区切ることを心掛けると良いでしょう。

④「伝わっている」「伝わっていない」はしっかりと伝える。

本人の話した内容に対して、うなずきや首振りで、内容を理解したか伝えながら会話すると良いです。必要であれば、もう一度内容を伝えてもらいましょう。その際、より明瞭に話すよう促して下さい。2回目の方がしっかりと聞き取れる場合があります。理解したふりをすることは、本人に誤解を生じさせ、気分の落ち込みにつながるため避けましょう。

【他サービス等の利用】

臨床心理士が自宅まで訪問し、カウンセリングを行うサービスがあります。また、「パーキンソン病友の会」など、同じ病気を持つ人たちと悩みを共有することで、症状が落ち着く場合があります。

 

2.幻覚、妄想

パーキンソン病は、治療薬の副作用により、幻覚(部屋に小さな子供がいる等)や妄想(家族にお金を盗られた等)といった精神症状が現れる場合があります。精神症状は治療薬の減薬や変更によって改善される場合があります。

ただし治療薬の減薬・変更は、手の震えなどの運動症状を悪化させる場合が大半であるため、自己判断で行わず、必ず医師に相談した上で行う必要があります。

上記のうつ症状に対して向精神薬が処方され、副作用として精神症状が現れる場合もあります。こちらも医師に相談した上で治療薬の調整を行うことで、症状が改善される場合があります。

 

3.構音障害(声が出にくい)、仮面様顔貌(表情がつくりにくい)

発声に関わる筋肉が障害されて声が出にくい場合や、表情をつくる筋肉がこわばる等の症状が出ている場合は、言語聴覚士によるリハビリをお勧めします。

また、以下のような福祉用具を利用することで、コミュニケーションを補助することも可能です。

①五十音の文字盤

言葉の一文字目に指を差してもらうことで、内容を推測しやすくなります。

(出典:株式会社 エスコアール

 

 

②コミュニケーションボード

日常生活でよく使う会話の内容が、イラストで一覧になっています。こちらに指を差してもらうことで、ご本人がいま何を考えているのかの推察につながります。

(出典:公益財団法人明治安田こころの健康財団

 

 

 

 

③ハンズフリー拡声器

両手を塞がずに使用できる拡声器です。声が小さい方に有効です。

参考商品:SANWAハンズフリー拡声器スピーカー

 

④Go Talkこころ工房

あらかじめメッサージを録音し、ボタンを押すことで録音した音声が出る仕組みの機械です。最大で25のメッセージを録音することが可能です。ボタンには絵や字を書き込むことが出来るため、それを見ることで再生したいメッセージが分かるようになっています。

参考:Go Talk商品紹介

 

※上記の要因が単一でみられることはほとんどなく、複合的に現れる場合が多いです。

複数の要因に対していっぺんに対応を行うと、どれが本人にとって最も重要なのかが分からなくなってしまいます。また本人にとっても、一気に環境が変わることはストレスにつながります。対応を1つ行ったら本人の反応を伺い、効果が薄いようであれば次の手段を試す、というように段階を踏むことをお勧めします。